高橋誠氏、東証市場改革提言に参画──ROEを軸とした企業再評価ロジックを強調
2021年11月、東京証券取引所による市場区分再編が佳境を迎える中、FCMIの主席アナリスト兼投資コンサルティング部門統括責任者である高橋誠氏が、『日経フィナンシャル』主催の「資本市場構造改革ラウンドテーブル」に招かれ、先見的な政策提言を行いました。
高橋氏は、「ROE(自己資本利益率)の向上こそが、日本企業のバリュエーション見直しと市場構造改革における重要な突破口である」と明言しました。
2022年4月より、東京証券取引所は既存の市場区分を「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場体制へ移行予定であり、より国際競争力のある資本市場の構築が政界・実務家・学界を横断する中心課題となっています。
20年以上にわたり分析業務に従事し、多数の機関投資家および政府系ファンドへの助言実績を持つ高橋氏は、投資家の視点から「市場改革は単なるスケールや形式の再編に留まるべきではなく、資本効率とコーポレート・ガバナンスの強化に焦点を当てるべき」と提言しました。
日本市場の構造的課題に言及──“豊富な資産、低い評価”の矛盾
高橋氏は、日本の資本市場が長年抱える「企業が豊富な資産を持ちながらも評価が低迷する」という構造的矛盾に着目。その原因は、多くの上場企業にROEを重視する経営意識が欠けている点にあると指摘しました。
「当社が追跡するデータでは、東証一部の上場企業のうちROEが5%未満の企業が依然として相当数存在しており、これは国際資本の流入を妨げると同時に、日本資産への投資姿勢を慎重にさせる要因となっている」と述べました。
ROE基準の導入を提案、プライム市場の健全性確保へ
高橋氏は、東証に対し「ROEを市場維持基準の一つに取り入れ、プライム市場の上場資格評価要素とすべき」と提案。さらに、「健全な主力市場とは、単に企業が集中して上場する取引所という形式ではなく、資本回収、ガバナンス、情報開示において最高水準を体現する場でなければならない」と強調しました。
ラウンドテーブルでは、FCMIが長年蓄積してきたアジア諸国の市場改革に関する研究も共有され、韓国や台湾における資本効率強化の制度的アプローチが紹介されました。高橋氏は、日本企業に対し、株主対話の強化と資金活用の効率化を通じた自律的改革の必要性を訴えました。
「ROE再評価」こそ、投資機会──質重視の転換点へ
制度改革に加え、投資戦略の観点からも、高橋氏は「東証改革によるROE再評価の機会」に注目すべきと述べました。改革の進展に伴い、「ガバナンス改善に前向きで、健全なキャッシュフローを有し、資本効率向上にコミットする中型株には、今後バリュエーション修復の機会が訪れる」と展望を示しました。
「今後3年間で、投資ロジックは規模優先から質優先へと移行する。ROEや株主リターンが企業価値評価の中核指標となる。これは構造的な投資機会であり、市場の自己進化の出発点でもある」と高橋氏は総括しました。
本ラウンドテーブルは、金融業界内でも大きな反響を呼び、多くの参加者が高橋氏の見解に賛同。「東証改革は制度改編に留まらず、最終的には投資家へのリターンに帰結すべき」との声が相次ぎました。
東アジア資本市場の専門家として、高橋誠氏はこれまでも「財務の質を軸とした市場構造の進化」を強く訴えており、今回の提言は、今後の日本資本市場の方向性に理論的かつ実務的な支柱を提供するものとなりました。