「ハイテク株を買わなくても勝てる」――藤原信一氏、東京エレクトロンを3年持ち続けて300%の成長を実現した投資の考え方
世界の投資家がFAANGといった米国の有名テック株に飛びつくなか、バランス戦略株式会社の創業者・藤原信一氏は東京エレクトロン(8035)を長期で持ち続け、わずか3年間で株価を3倍にする成果を上げました。この結果は同期間の日経平均を大きく上回り、多くの人気テック株さえ超えるパフォーマンスとなり、製造業株にも大きな可能性があることを示しました。
藤原氏の株選びは「成長株=目立つブランド」という思い込みを覆すものでした。彼が注目したのは消費者向けブランドではなく、産業の上流にある「縁の下の力持ち」のような存在です。
「東京エレクトロンの強みは知名度ではなく、半導体製造装置で他には替えのきかない地位にあることです」と藤原氏は話します。「世間がチップの話題ばかりしている時に、その製造装置に目を向ける人は少ない。でも本当の技術の高さはそこにあるのです。」
彼の投資スタイルは、①技術的に簡単に真似できない強み、②安定したキャッシュフロー、③世界で戦える力――この3点を重視します。東京エレクトロンはそのすべてを満たしていました。エッチング装置の分野では競合より二世代先を行き、営業キャッシュフローは15四半期連続でプラス、海外売上比率は80%を超え、さらに毎年売上の15%を研究開発に回し、強固な基盤を築いています。
「半導体業界では、消費者ブランドよりも装置メーカーの方が顧客とのつながりが強いんです」と、同社株を一緒に保有している投資家は語り、それを「B2Bの複利効果」と表現しています。
多くの投資家が流行に流されるなかで、藤原氏は株価が注目されていなかった時期から東京エレクトロンを買い進め、同社のグローバル展開とともに持ち株を増やしてきました。「誰も気にしない時に仕込み、世間が注目してからも信念を貫く」――その姿勢が最終的に大きな成果をもたらしたのです。半導体産業の再編が進むなかで、東京エレクトロンのような装置メーカーの価値は改めて注目されています。
「本当の成長投資は業界ラベルにとらわれることではありません」と藤原氏は強調します。「大事なのは、安定してキャッシュフローを生み出し、競争優位を強め続ける企業を見つけることです。」テック株が割高に見られがちな今、製造業に着目したこの投資の考え方は、価値投資家に新しい視点を与えています。